けんじワールドにようこそ~吉岡絵画に親しむ方法~

 郷土博物館2016年秋季企画展では、110羽の鳥を全壁面に展開。
室内いっぱいに広がった鳥たちに、圧倒された方も多かったのではないでしょうか。
 吉岡堅二画伯は日本古来の花鳥風月の趣を大事にしつつも、大胆にデフォルメに取り組んだ”日本画家”でした。
画伯の本格的なデビューの作品も動物を描いたものでした。<奈良の鹿>(1930年)。若干23歳で帝展・特選。
 そのため、画伯の作品には、昆虫から大型動物まで実に様々な「生き物」が登場します。
同時に、植物にも造詣が深く、両者を同一画面に見事に纏めて一つの作品にしていきます。
 今回は、それらの中のいくつかを紹介します。
夫々の作品の中には一体いくつの生き物がいるか、数えてみるのもまた鑑賞の楽しみの一つ、と言えないでしょうか。
*今回は、大型の動物類は省いています。例外は③の熊)
*この他にもまだまだ多くの動物をテーマにした作品があります。同じようにして、親しんでみてください。
*著作権の関係で、作品は掲載できません。画集等でご覧ください。本物を見るい機会があれば、絶対にお見逃しなく。
複数の生き物が存る作品=何種類?・何匹?
①<熱帯植物と蛾>(1935年):全体をよく見てください
②<尾瀬沼畔>(1947年):しっかり目を凝らして・・・
③<湿原>(1949年):隠れた鳥もいますよ。
④<楽苑>(1950年):文字通り思い思いに楽しんでいる姿が描かれています。けんじワールドの真骨頂!
一種類のみで複数の作品=種類は?何羽?
⑤<水禽屏風>(1951年):楽しきかな・・・
⑥<雉子>(1952年):やっぱり表情が・・・
⑦<群鶏>(1953年):何を言い合っているの?
⑧<くじゃく>(1954年):思い思いに・・・
⑨<水鳥屏風>(1955年):楽しさいっぱい
⑩<暁>(1956年):切手にもなりましたね
⑪<飛翔>(1958年):羽音が聞こえてくるような・・・
⑫<飛翔>(1960年):力強さ・・・
⑬<浮遊>(1976年):かわいい鳥たち
⑭<黒鳥屏風>(1978年):思い思いに・・・。
⑮<荒磯>(1982年)3羽の関係は?
⑯<蘆鴈>(1983年):目元に注目
⑰<翔>(1986年):元気でねー、また会おう
一種類で単独の作品=何という種類?
⑱<巣立>(1949年):うーん・・・
⑲<くさむら>(1950年):愛嬌のある顔・・・
⑳<かわせみ>(1956年):こんなところに・・・
㉑<孤>(1981年)表情に注目
㉒<ほととぎす>(1990年):画伯最後の作品?

”苔庭”に2匹の魚⁉

 ここで、特報です。
先日、和歌山県の田辺市立美術館で開催された特別展<生誕110年記念・吉岡堅二展>を鑑賞していて、思わぬ発見をしました。
(この展覧会に関しては別報で紹介します。)
 <苔庭>(1941年)という作品の中に、何と‼‼ 2匹の魚の上半身が描かれているのです(としか、私には見えない)。
もちろん、画伯にはここに”魚”を描くつもりなど毛頭なく、偶々私にはそのように見えてしまうのでしょうが、見れば見るほど向き合った2匹の魚なのです。
法隆寺の金堂壁画模写のためにいた奈良から、時間を見つけては諸所を訪ねた中の京都・西芳寺での庭からモチーフを得て描かれた一枚です。
苔庭ですから当然生き物がいるはずもなく、モチーフ(ヒント)を得て自分なりに制作した作品としても、ここに生き物を登場させるとは思えません。また、私の知る画伯には、こういう種類の遊び心?はなかったと思います。
したがって、この話はあくまでも私がそう見てしまった、というところからの話です。
著作権のためここに絵を掲示できませんが、皆さん、郷土博物館や図書館等にある画集でぜひこの絵を見て下さい。
きっと、私の言うことが納得していただけると思います。
 (本物ほどには、確とは判別できませんが、画集からでもそう思ってみるとちゃんと魚に見えます)                                                                                                                                                                                                                 <S.T.>