ソメイヨシノに危機

2017年4月1日付「東やまと市報」に、市長コラム ~多摩湖のさくらその後~ が
掲載されました。
この記事の主旨は、多摩湖の自転車道にあるソメイヨシノが老木となり倒木の危険がある
ので、ジンダイアケボノに順次 植え替えしていくという内容でした。
この記事を読んで、なぜソメイヨシノを植えないの?と疑問を持った人がいると
思います。
実は、ソメイヨシノの苗木は現在、一般には販売していないそうす。
(公益財団日本花の会では平成17年度からソメイヨシノの配布を中止しています)
一番の理由は、“てんぐ巣病”に罹りやすいことです。
“てんぐ巣病”は伝染性なので、病気が拡大することを懸念したためです。
ソメイヨシノはこれ以外の病気にも耐性が弱いのです。
日本各地のソメイヨシノはすべて一本の原木から生まれている、即ち、DNAを同じく
するクローンなので病気の拡大が進みやすいのです。
昔から、「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と言われるように、桜の枝を切ると腐食が
進むので、“てんぐ巣病”に罹った枝を簡単に切り落とせないこともあります。
そこで、代替樹として選ばれたのが、ジンダイアケボノでした。
ジンダイアケボノは、数奇な運命を持って生まれました。
かって、日本から米国のワシントンにソメイヨシノを送ったのは有名ですが、
このワシントンの桜から、新種の桜であるアケボノが生まれました。
このアケボノを日本に持ってきて、神代植物園に植えたのですが、
このうちの1本が、アケボノとちょっと違う花が咲いたのです。
この桜の名前を、神代植物公園で生まれたことから、ジンダイアケボノ(神代曙)と
名づけました。
母親はソメイヨシノ、父親はどこの誰だか分からない。そういう出生の秘密がある桜です。
ジンダイアケボノは、ソメイヨシノの開花時期とほぼ同じで、
花が咲いた後に葉っぱが出るというところもソメイヨシノと同じ。
ソメイヨシノと比べると少し小ぶりの木だが、よく似ているそうです。
ソメイヨシノにとってもう一つ困っている状況があります。
ソメイヨシノはとても大きくなる木でありながら、街路樹等狭い場所に
植えられることが多い。
木が大きくなると、枝が横に張り出し通行や、電線の邪魔になってくる。
道路の下では、枝が張るのと同様に根っこが伸び広がる。
そして、地面が凸凹になり、歩くことや、車椅子の通行の障害になる。
ソメイヨシノは寿命が60年と言われています。
やがて、ソメイヨシノは駆逐されて、花見はジンダイアケボノの時代になるのでしょうか。
                                        大一大万大吉