宝を引き継ぐ
後継者が育たない
後継者不足で一番頭を抱えている産業は農業であろう。
日本の食料の自給率は、37%である。
高齢化により放棄農地も続出している。
次に、町工場である。技術力があり、各種の部品作りに優れて
ハイテク産業にない手作業による製品は、宇宙探査等最先端
の科学にも大いに寄与している。ところが、後継者がいない。
いや、育ててないと言った方がいいかもしれない。以前、後
継ぎとして自分の子どもが親の技術等を身につけて引き継い
で工場は残された。ところが、苦労して身につけた技術や工
場の経営に、あるときには、資金繰りにまた、あるときには、
人手不足に心身を疲弊させたことを子どもに同じ苦労をさせ
たくない親心が強く働いて後継者を育てない。
その原因は、社会構造、産業構造によるものでもある。
後継者を育てるのが上手なのは、政治家である。特に
保守系代議士に世襲代議士、二世代議士と子どもは無
論、兄弟、孫、婿と縁戚に政治家素質のある人間に育
てる。
医者の子も医者になる。
古典芸能である歌舞伎、能、狂言、文楽等の家に生まれ
れば、幼いころから芸の基本やしきたりを自然に身につ
け、子役として舞台を踏み、親や師匠の芸を継承していく
こととなる。
さて、食料事情のように大きな問題は、国が考えること、
もっと卑近な例として趣味とか学習とか団体活動などの
中心となっている牽引役など面倒見てくれているリーダ
ーあるいは会員の高齢化によって存続が困難になってサ
ークルを解散に追い込まれる例が、コロナ感染拡大により
長い活動停止期間を機に続出している。
この大きな原因の一つは、リーダーが、後継者を育ててい
なかったことでもある。
さて、東大和市狭山在住の水墨画家S先生は、独自の技法
を独学で考案している。
墨の濃淡で表現するので基本的には輪郭を描かない。幽
玄性、神秘的な描写で立体感や奥行きを表現する。
・・・線描を排し、陰を描くことによって光を現わす・・
すなわち白抜きの逆筆法という独自の筆法をもって描き
これに暈し・垂らしこみ・滲み等を加え、神秘性や幽玄の
世界、そして現実性、またときには幻想的な作品を描く
ことを心がけている。と本人は技法や表現方法、そして
何よりも大切な画学の神髄について述べている。
各種展覧会において大臣賞等を受賞し、また、京都の寺
院を初め神社仏閣、公共施設などに関係ある水墨画を寄
贈している。
東大和にも、水墨画教室があり、それぞれ7~8名の生徒
が学んでいるがいずれも老齢の女性である。
S先生の技法を習得して引き継ぎ弟子を育てる後継者は
見当たらない。
脱退団体が、続出する東大和市文化協会
今年度3月末を以て文化協会を脱退する団体(サークル)
が4団体ある。その理由は、会員の高齢化により協会の
運営、イベント等に参加出来ないということである。
この4団体(花道連盟、菊花愛好会、手工芸連盟、アマチ
ュア無線クラブ)は、創立50周年を迎えた文化協会の活
動に創立当初から多大な貢献をしてきたグループである。
ここにも、後継者不足である。後を引き継ぐ若い人を育て
てこなかった。あるいは、自分たちの文化の魅力を若い
人たちに伝えてこなかったことにもある。
郷土の歴史を引き継ぐー東大和デジタルアーカイブー
今回、東大和市の歴史をデジタル化しようと声が上がって
3年目、3月1日いよいよ公開された。
東大和デジタルアーカイブは、市民の手で作られたもので
ある。余り例のないことで通常、郷土博物館あるいは、図
書館等歴史資料を所有しているところが郷土史に精通して
いるスタッフが編集するか、専門業者に委託するのが通常
である。
今回、編集作業に当たり長く郷土史を研究され多くの調査
資料、画像との収集をされてきたAさんのご協力は大きな
柱となった。
さて、この貴重な宝物を今後、運用しメンテしていくため
には費用とメンテする人材が必要となってくる。
市民が、自分の住んでる街が、どのような街だったのかを
知るためにこの「東大和デジタルアーカイブ」(郷土のデ
ジタル歴史館)を見ることによって役立つことと思う。
スマホをもって神社仏閣、遺跡、水没した集落のあった多
摩湖、戦争遺産の旧変電所等を訪ね歩くのにガイドブック
としても良い。