頼まれたラブレターの結末

中学の部活を地域へ移行

スポーツ庁の提言では、公立中学校の休日に行なわれ
てきた部活を原則として2023年度からの3年間で地域
へ移行するため、自治体などに働きかける。少しでも
員の長時間労働を是正するためである。等検討が進
られている。

こころときめかせる恋文

この提言とは全く同じではないが小生の高校では、K
輩がボランテイァで指導に来ていた。K先輩は、地
元の
鉄道会社に勤めていたが、空き時間に学校にやっ
てき
て練習を見てくれていた。
高校の部活はバレーボール部であった。
顧問の先生は、運動とは全く、縁の遠いスポーツ音痴で
あったから指導者を探していた。数人の候補の中から
K先輩に白羽の
矢がたったのである。
3年生の時、K先輩から同じクラスのM子にラブレター
渡すように頼まれた。K先輩は、在学中は、身長1m
75㎝
のアタッカーで怖い存在であったので断るわけに
いか
なかった。
白い封筒の中に熱い想いがあると思うと軽々しく持ち
歩けずにチャンスをねらった。しかし、一週間が過ぎ
たが部室内でM子と二人だけなる時間は、ついに訪れ
なかった。
K先輩とはなるべく顔を合わせないように避けていた。

ラブレターを持ち歩いている気持ちと渡すチャンスを
常にねらっている緊張感は重かった。

また、K先輩は、ラブレターがM子に渡っていれば彼女
K先輩に対する反応が態度に現われる期待感に心が
呪縛
されていた。
一週間が過ぎてK先輩から「渡したか?」見下ろされ
た。

「いや・・まだ・・です」
「だめな奴だな。早く渡せよ。」

とすごまれて小さくなり「はい」とだけ答えた。
(美空ひばりの車屋さん)
”あてにならない~お人は馬鹿よ。あてにする人~もっと馬鹿”
エー車屋さん

ある日、チャンスが訪れた。その日は、遅くまでの練
習が終わり皆な思い思いに下校を急いでいた。部室に
最後
まで残っていたのはM子と小生である。ここは、
チャ
ンスとM子に近づいて「これK先輩から頼まれて
・・」

と自分の手が震えているのを隠せず手渡した。
黙って
顔を赤らめ「ハァー?」と言ってから受け取っ
た。
その行動は素早かった。
大きく息を吸い込んで難問の回答が得られたように肩
の重荷を降ろした開放感からサッサと部室を後にして
「お先に」とM子に言った。M子は、黙っていた。

M子は背丈が、すらっとして1m70㎝近く色白で髪を長
くしているから面長の顔が一層長く見えて浮世絵の美
人画の女を思わせた。

夏休みに入るとすぐ地区のバレーボール大会が開催
される。十数校の高校が参加してトーナメント方式
で試合が繰り広げられる。

男子は、1回戦で負け、女子は準決戦まで勝ち進んだ
が惜敗した。小生もM子もレギュラーとして参加
して活躍した。当然、K先輩も応援に駆けつけて一
戦一
戦アドバイスしてくれた。

K先輩には、依頼されたラブレターをM子に手渡した
こと
を伝えてあった。
二人がどのようになっているか知ることもなかったし
K先輩からも何も聞いていなかった。

夏休みが終わった。二学期が始まった。部活のバレー
ボール部もいつもの通りコートにネットを張って練習
始まった。残暑が厳しい。夏休みでなまった身体は、
なかなか元には戻らない。
三年生は、進学や就職に忙しい。二年生が中心となっ
て練習が進められた。K先輩の姿も時々練習を見にく
程度でコートには出なかった。
新学期が始まってM子は、学校を休んでいた。その事
情は、だれも知らなかった。一週間が過ぎて顧問の先
生から彼女が、家庭の事情で退学したと知らされた。

それから3年後、小生は、東京から帰郷して姉の嫁ぎ
先の商家(酒ほか食料店)の青色申告の帳簿類の作成
手伝いに電車で隣町に出かけた。
座った席のすぐ前に
M子が子どもをつれて座っていた。
互いに気がついて
軽く会釈をしてからM子は子どもに
話しかけていた。

その光景は、周りの他の乗客の視線を浴びていた。
そこへその電車の車掌であるK先輩が乗車券を売りに
た。K先輩に気づいてやはり軽く会釈した。
M子は、子
ども相手にしていて気づかない風であった。

後日談~顧問の先生~
夏休みに入る前、M子の母親から相談があった。娘か
らラブレターを見せられ、こんなものを渡されて大変
惑をしている。と非難された。

M子は、学校を卒業をすると嫁入り修行をしてから結婚
する。その
相手も決まっていた。その前に変な虫がつい
ては困って
いる。すぐ退学するように説得したが、せめ
てバレーボ
ールの地区大会には参加したいので終わるま
で待ってか
らにして欲しいと娘に懇願された。
と母親は言った。

M子は、地区大会で活躍して心残りもなく退学すること
にしていた。

K先輩には、顧問の先生からM子は、結婚相手は決まっ
ているか
らと告げて彼を責めることはしなかった。

さて、中学校の部活は、学校生活の思い出としていつま
でも心に残っているものである。文化的な、またスポー
ツとして
の活動は、出会い、ふれあいの対人関係に、団
体生活にと成長期におけるこ
ころやからだを育むいい機
会である。

自治体には、体育協会とか文化協会等の活動団体があり
その中から部活の指導者の派遣を依頼するのも一案かと
思う。

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