西山の夜泣きさま
個人の屋敷神ですが、子供の夜泣きが治るとの伝承が残されています。『東大和のよもやまばなし』から紹介します。
高木村の西の端の高い所にあるので西山のダイさんと呼ばれている家のお稲荷さんは「夜泣きさま」といって村の人達に大変信仰がありました。それは子供が夜泣きをして困った時に背負ってお参りすると不思議と夜泣きがなおったからで、多くの人が五厘(昭和初め)のお賽銭を上げてお願いしていきます。由来は当家でもわからないということですが、お参りして一週間もすると、
「おかげさまでなおりました」
と油あげや豆腐を供えてお礼にいきました。
高い所にお社があるので赤ん坊をおんぶしたおばあさんは登っておまいりするのがとても大変でしたので、山道の下から拝んで帰る人もいたそうです。それでもご利益には変りなかったようです。
夜泣き礼願などする若いお母さんは少なくなった昨今ですが、時にはお賽銭のあがっていることがあります。なかには今でも願い事をよくきいてくれるからと、毎月欠かさず遠くからおまいりに来る人もいるということです。
毎年二月十一日にはお神酒・赤飯・油あげなど好物を供え、篠竹に紙の旗を立ててお祭をしています。
御当主の手造りの赤い立派なお社には、京都の伏見稲荷神社の分社であるという書付けが納められており、いかにもご利益がありそうです。
松山の中でどんどん開発されていくまちの発展を見守るように鎮座ましましています。(p11~12)
「外からは場所がわからなくなったけど、今でも、時々、お参りさせて下さいって、来られるよ」
「夜泣きですか?」
「それは聞かないことにしてる」
「世の中、複雑になったから、願い事もいろいろでしょうから・・・」
「ここへ、引っ越して来た後でね、祠の中を掃除した時さ、ヤモリが2匹居なさった。そりゃビックしたよ。けれど、こうして家を守って下さってるんだと改めて気がついて、とっても感謝してるんだ」
(2017.07.25.記)5